警察、という言葉に、一瞬周りが凍りつく。どうせ、警察に通報するようなことでもない。

 自分でも、警察という存在はあまり好ましいものでも無かった。一度、勇気を振り絞って、母のことを警察に相談したのだが、証拠不十分とかなんとかで、結局相手にもしてもらえず、『守る』とか表明だけ言っておいて、今じゃ月一で警察署行って、「何もなし」と言われて追い返されるだけの日々を送っているようなものだ。

 つまり、助けを求める術は無い、ということだ。

「いや、僕はなにも助けられたい訳じゃないし、別に」

「嘘ついたな。それ、嘘ついてる時の顔だぜ?助けられたいのに、助けられる術が無いんだろ?」

 アクトは、感がとても鋭い。それは僕より優れていて、とても人間だとは思えない程に。

「ほんと、感がいいな」

「まぁな、常人を超えてる自信はあるぜ」

 犬歯を見せてキシシと笑いながらアクトは言う。

 それを見ていると、自然と笑みがこぼれてしまう。アクトには、雰囲気を一気に変えられるようなところも有ると、改めて実感させられる。

「常人ってなー、もはや人間を超えてるぜ」

「だな」

 僕自身も一応、『耐える』という分野で常人を超えているのだが、流石にここまでできる訳も無い。

 アクトほど凄い人間は、他には出会ったこともない。

 __むしろ、出会いたくない、というのが本心なんだ。

「おっはよー!」

「おはようございます」

 そんなことを考えている間に、そんな軽い挨拶を交わした人々が次々と入ってきていた。

 その中でも、凄いオーラを、威圧感を放った一人の男子が入ってきた。

 ああ、アイツだ、餓鬼大将だ。