そして、入学式から一ヶ月。





私は…私たちは平和(?)に日々を過ごしていた。





「柚乃また饅頭〜〜??」




「当たり前。これないと動けない。」






私がモグモグと饅頭を頬張っていると、目の端に依の手が伸びているところが映った。





それを見て、依を思い切り睨みつける。






すると、怯んだのか、諦めて自分のご飯を食べ始めた。






「てかさ〜この学校本当に自由だよな。
魔法の訓練っつてもなんか基礎ばっかだし。」







「まあ、暇ではあるが、充実してるとも思う」





「そう?柚乃が楽しいならいいんだけど」






「お前は?」


「ん?」



「だから、お前は楽しいのか?」



「俺、耳悪いから聞こえなーい」






そういうのを聞こえてるっていうんだが。
不審に思い、





「何が不満なんだ?依?」




訊いてみた。
すると、


「それが不満〜〜。」





「は?」





意味がわからない。
この男は、たまに訳がわからない。





「だーかーら、その“より”ってのが嫌なの〜〜
俺の名前は“よる”なの〜〜」





そんなことか。
答えを待っていた時間を返して欲しい。





「なんで?容認してなかったか?」






「毎回そう呼ぶからちょっと流されちゃってたけど、やっぱ本名の方が嬉しいな〜〜なんて」





「小さい頃私が漢字を読み間違えてからずっとよりだったんだから、今更変えられない」





「で〜〜も、俺っていう人間が公認されないっていうか、なんか〜〜」






「よりでもよるでも、お前はお前だ。
私の隣いるのが依だ。
その理由だけじゃ不十分か?」







私は固いと言われた表情筋を使うことなく答えた。





「おっ、おう、そーだな…」