魔法科高校の十二跡

「うららかな春、雲一つない青空。
この日にこのような式を迎えられることを嬉しく思いますーーーーーーー」












「暇だな〜〜出てって良いかな〜」








眠そうな目をこすりながら、依は言う。










「これくらい、寺子屋に比べたら全然マシでしょ」







「やーっと自由に柚乃とイチャイチャできると思ったのに、こんなのって…」









「はぁ…」








またこれだ。
別に気があるわけでもないのに、易々と口説き文句を並べて私をからかおうとする。











ただの腐れ縁だ。
何を思うことがあるんだ。










それに、私には、アイツが、、、









「また、考えてた?あいつのこと」









「…うん」









どうしても思い出してしまう。
あの日がなければ、今頃…と







「ねぇ、柚乃?」







依がいきなり顔を寄せてくる。
拳一個分くらいしかない空いてない。








「なに…今式の途中なんだけど」









吐息が耳にかかる。







変な気分だ。慣れっこだけど。








「俺にしたら?」








「はっ?」








「ふっ」






「っ…」







いきなり耳に息を吹きかけてきたもんだから、思わず声が出てしまった。








「静かにしなきゃダメなんじゃないの〜〜?」








「あんたのせい」









これまた何回目なんだ。
依は、あの日から…
アイツが消えた日から俺にしろって。
何度も言う。
だから、私も何度も返す。









「あんたには役不足」










「わかってるって。素直でよろしい!」











依はわざと言ってるのか、ただ本気で想ってくれてるのかわからない。




でも、例え後者であっても私はそれに応えられない。









「代わりになんて誰もなれない」






小さく聴こえないように呟く。









依が真っ直ぐこっちを見つめてるのを見て見ぬふりしながら。






「俺は俺なんだけどね」








私は聞こえなかった。
同じように小さく呟く声を。
同じじゃなかったのかもしれない。








絶え間ない静寂の時は過ぎて行き、
いつの間にか入学式は終わっていた。