「うららかな春、雲一つない青空。
この日にこのような式を迎えられることを嬉しく思いますーーーーーーー」












「暇だな〜〜出てって良いかな〜」








眠そうな目をこすりながら、依は言う。










「これくらい、寺子屋に比べたら全然マシでしょ」







「やーっと自由に柚乃とイチャイチャできると思ったのに、こんなのって…」









「はぁ…」








またこれだ。
別に気があるわけでもないのに、易々と口説き文句を並べて私をからかおうとする。











ただの腐れ縁だ。
何を思うことがあるんだ。










それに、私には、アイツが、、、









「また、考えてた?あいつのこと」









「…うん」









どうしても思い出してしまう。
あの日がなければ、今頃…と







「ねぇ、柚乃?」







依がいきなり顔を寄せてくる。
拳一個分くらいしかない空いてない。








「なに…今式の途中なんだけど」









吐息が耳にかかる。







変な気分だ。慣れっこだけど。








「俺にしたら?」








「はっ?」








「ふっ」






「っ…」







いきなり耳に息を吹きかけてきたもんだから、思わず声が出てしまった。








「静かにしなきゃダメなんじゃないの〜〜?」








「あんたのせい」









これまた何回目なんだ。
依は、あの日から…
アイツが消えた日から俺にしろって。
何度も言う。
だから、私も何度も返す。









「あんたには役不足」










「わかってるって。素直でよろしい!」











依はわざと言ってるのか、ただ本気で想ってくれてるのかわからない。




でも、例え後者であっても私はそれに応えられない。









「代わりになんて誰もなれない」






小さく聴こえないように呟く。









依が真っ直ぐこっちを見つめてるのを見て見ぬふりしながら。






「俺は俺なんだけどね」








私は聞こえなかった。
同じように小さく呟く声を。
同じじゃなかったのかもしれない。








絶え間ない静寂の時は過ぎて行き、
いつの間にか入学式は終わっていた。