騒ぎが収まり、事態の収拾もつき始めた頃、私と依は合流してそれぞれの状況について話し合っていた。








「教室の方は、私と依の持ち物が重点的に荒らされてた。」




「おう」





「でも、何も盗られてなかった」





「おう」





「だから、私たちの持ち物に狙いがあったんだと思う」




「おう」






一方通行のこの会話が不自然に感じた私はふと依に目を向ける。




彼の視線は完全に虚空を捉えていた。
つまり、私の話なんて全く聞いてないのだ。





「依?」



「おう」



「聞いてる?」




「おう」




「………………」





何を言ってもダメそうだこれは。
仕方がない、と溜息を一つついて、





「1+1は?」


「おう」




意を決して私は









パチンッ






依の左頬を叩いた。




「んだよ、ふざけんな…っ」

依の手が反射的に私の右頬を捉える。







パチンッ





私がしたのと同じように依は叩いた。


しかし、私は頬をかすめた依の手をガシッと掴んだ。






「あっ…ごめん…」

本当に無意識的に手が出てしまったようで我に返って謝る依。











「ねぇ、何があったか知らないけど話はちゃんと聞け。
学校を狙った犯行に見えてこれは私たちとは無関係の事件じゃない。
よそ見してると足元すくわれるよ。」





そうして、依の手を離した。









「わかった…でも聞いてたよ?」

少し普段通りに戻った依は、余計な一言を発する。





「うるさい。とりあえず私の予測では狙いは私たちの数字石。」






「っ………!!!」





私の言葉の語尾を聞いた瞬間。








冷静を取り戻しかけていた依がまた動揺をし始めた。