依side



俺は逃げた黒武装を追いかける。
すぐに追いつけると思ったけど、
意外にすばしっこいし、魔法も何個か仕掛けてあって一筋縄じゃいかない。





「くっそ、こんなときに面倒な奴くんなよ…」






今朝から柚乃の様子が変だった。
原因は昨日のことだってわかってたけど
あえてその話を振った。






無論、柚乃が碧さんのことを好意の目で見るわけがない。
柚乃は、涼しか見えてない。
あらかた、昨日のことで碧さんのことが気がかりになったところだろう。






俺は昔から柚乃のご機嫌とりが苦手だ。意図して何かやるとすぐに気づいて、
怒り出す。
だから、諦めて普通に接するといつの間にか機嫌が直る。








だから、今日も自然に自然にって思ったのに墓穴掘るし、さらに機嫌悪くなるし、ムカムカする。










柚乃はきっと俺を疑ってる。
そんなのわかってる。
でも聞かない。
心の中で葛藤し続けているんだろう。










俺は、そのことだけは、話せない。
本当のことは、話せない。
例え、柚乃が俺のもとに来ようと、脅そうと、殺そうとしても。







でも、言いたい。
けど、言えない。
だから、答えとして俺は柚乃の側にいる。



そう、決めたはずなのに。








このムカムカは収まらず、周りの敵に八つ当たりのように魔法攻撃を与えるしかない。










「やっと追い詰めた。」




そんなこんな考えているうちに外に出ていて、しかも突き当たりの場所まで来ていた。





「あそこで何してたのか吐いてもらおうか」





俺はできるだけ早く魔法を繰り出そうとしたが、急に耳鳴りがした。




「くっ…なんだ?!」






目の前の黒武装のやつが何かを取り出している。

魔法妨害装置か…





苦戦してる間に敵は逃げた。
それを追いかけようと手を伸ばす。





ガッ





必死の思いで掴んだ腕には、、、
緑色に光るブレスレット。







「なっ…………」








俺が動揺している間に敵は俺の腕から逃れ、逃げて行ってしまった。






でも、追いかけなかった。
いや、追いかけることができなかった。









なぜなら、緑色に光るブレスレットは…



















皐月の…皐月家の数字石…翠玉(エメラルド)だったからだ。