依に対する不安を抱えたまま、朝を迎えた。
昨日はいつの間にか寝ていたのか、
カーテンが開けっ放しで太陽の光が
直接私に降りかかった。
「……まぶし…」
いつも通りにご飯を食べて支度をする。
そして、いつも通り…
「あ、柚乃おはよ〜〜
いつにも増して眠そうだねぇ〜
でも、そういう顔も可愛いよ」
こいつがいる。
私は迷惑な挨拶を無視して、家のドアの鍵を閉め、さっさと学校へ向かう。
「なに、いつもより機嫌悪いの?
やっぱまだ禁忌について話したの怒ってんの?」
「はぁ…」
依はなんの前触れもなく本題へと話を進める。
無自覚なんだろうけど、私を苛立たせることには変わりない。
「翠なら誰にも喋らないって、
もし喋ったとしても俺が記憶改変するからさ〜〜」
「…………」
私は一切依の問いかけには
応じなかった。
それにしても、記憶改変か…
如月家は紫電-パルス-の名の通り、
電気使いの家系だ。
電気の扱いはお手の物、機械に干渉してシステムダウンを起こすこともできるし、人間に干渉すれば記憶を変えることもできる。
私の記憶も書き換えることは可能だろうが、それは今の私には無理だ。
如月家が電気を扱えるのは、もちろん血筋もあるが、そのほかに自身が電気に対する耐性があるからだ。
幼少期から電気に慣らされ、それから魔法を学ぶ。
霜月家である私がなぜそんなことを知っているのかというと、私たちの親の代から如月家と霜月家は友好関係にあり、色々と情報を共有しているからだ。
それは他の十二跡から良くは思われてないが、四幹部であるこの二家に逆らうことはできない。
そういうことで、私も3年前に電気に慣らされ、如月の魔法の耐性を作らされたのだ。
だから、記憶改変など効きはしない。
それに、もしされていたとしても、
すぐに気づくはずだ。
私の記憶に間違いはない。
「……のっ、ゆ…!柚乃!!」
考えにふけっていた私は依の話などまったく聞いていなかった。
「なに?」
「いや、なにって…今日は生徒総会があるんだよな?って話」
「ああ…そういえばあったな」
いつの間にか話が変わっていたようだ。
「生徒総会ね〜〜十師族も碧さんもいるしあんまり関わりたくないんだよね〜〜」
「また長月か…」
さっきから不穏な名前ばかりが依の口から出てくる。
私がまた考え込んでる姿を見て、
依が何かを察したように言葉を発した。
「柚乃…まさか……?」
「なっ…」
私が依を疑ってるのがバレたのか?
妙に勘が鋭いのはわかっていたが、
こんなに早く私の思考が漏れる日が来るとは…昨日の今日で?
依の言葉の続きを内心ビクビクしながら
待つ。
「やっぱり、柚乃…
碧さんのこと好きなのか?!」
「は?」
私の予想に反した答えが返ってきて、
目を丸くした。
「確かに、碧さん、顔綺麗だし、スラッとしてるし、ドSだし、きっとSに見えるようで実は超Mな柚乃とは相性がいいけどっ…!!!」
「やめろ!お前なにを言ってる?
あいつのことなんか好きじゃないし、
ましてやMでもない」
「そんな全力で否定されたら、逆に怪しいでしょ?!
俺はダメで碧さんならいいのかよ?」
「ふざけるな!
私がなんで嘘をつく必要があるんだ?」
「だって、柚乃って滅多に人のこと好きにならないし相談しないじゃん。
俺は素直な柚乃が好きなの!
怒らないから言ってって。」
「だから、素直に言ってるだろ?!
私は、依も長月碧も好きじゃない。
これが真実だちゃんと聞け。」
「そんな必死に弁解しても無駄だって。
あーあんなに可愛かった柚乃を汚すなんて…碧さん許すまじ、、、」
グルグル回る私の思考はいつの間にか停止…いや強制的に停止させられた。
この後、本気で長月碧を殺しに行こうとした依をなんとか説得した。
