考えても無駄だ。
私は迷いを振り切るように首を振った。




きっと気のせいだ。
石英の件はホラ吹きが言ったことで、
長月碧もただ何を考えているのか掴めないだけ。
依だって…こうして隣にいる。
それでいい。







隣にいる依を私は無意識に見つめてしまっていた。








それに気づいた依が意地悪そうな笑みを浮かべて、




「なに〜〜柚乃、もしかして俺に気がむいた?」



そして、両のほっぺをつねられた。





「った……そんなわけないだろ、
自惚れるな。」




「ちぇー素直じゃないと可愛くなーい」



「余計なお世話」




「それより、依。
なんで翠に禁忌のことなんて話したんだ?」





「それね〜〜なんか、昔のこと、思い出しちゃって」




「誠一郎との?」






「そっ。俺にとって幼い頃の記憶は結構大事だからさ〜〜」






ほら、やっぱり。
ちゃんと依にも幼少期の記憶はある。
私が覚えていないだけだ。









でも、私は…気づけなかった。
































依の目から涙が溢れていたことなんて。