茂みから出て来た男子には私たちは二人とも見覚えがあった。




あんな綺麗な澄んだ青緑色の瞳を持つ家系は一つしかないからだ。




翡翠-ジェイド-の名を司る皐月家の家系の人間だろう。





「そんな大声で叫ぶなって。
そもそも、お前寺子屋はどうした?
高校生になるまで抜けるのはご法度だったはずだけど?」



「なっ……………なんで俺が十二跡の人間だってわかる?!」




「いや、お前さっき自分で十二跡がどーちゃらこーちゃらーって言ってたし。
それに、その眼。」




依がそう指摘すると、男子は慌てて片目を手で塞いだ。
もう遅いと思うんだけど。
って、隠したら何も見えないし。




「ふっ………」




あまりの天然っぷりに私はふき出してしまった。




「わっ…笑うなよう…!!!」




「柚乃が笑うなんて珍しいこともあるもんだな〜
お前才能あるよ。」




「なんのだ?!
って突っ込んでる場合じゃねぇ!!」




拉致があかなさそうなので、
本題に戻すとする。





「はぁ…とりあえず、名前、なに?」




「俺の名前は、皐月翠(あきら)だ」




それを聞いて私たちは同時にため息をつく。




「あのなぁ〜嘘ついてどうする?
大体皐月家には子供は一人しかいないし、中学生くらいの男なんていないんだよ」



「うっ…」


綺麗な顔が色んな衝撃を受けどんどん歪んでいく。
私もだんだん可哀想に思えて来たからフォローをしてやることにした。




「皐月家ではないが、その家系ではあるんだから、別に私たちと同じ立場でなくとも対等に話せるんだ。
素直に全部話した方がいい」




翠は依をキッと睨みつけてから、肩の力を抜くように息をして口を開いた。




「コホンッ…俺の名前は橘翠。霜月の女が言った通り皐月の家系の橘の家に生まれた者だ。」