そして放課後ーーーーーー





俺らは生徒会室の前まできていた。





「まじで、なんかやらかしたかな〜〜」




「生徒会室…」




「柚乃?」




心なしか柚乃は嬉しそうにしているような気がする。



なぜ呼ばれたか、大体想像はつく。
きっと、柚乃も気付いてると思ってるんだけど…



「なんでそんなテンション高いの〜?」




すると、子供が新しいオモチャを与えられた時の表情(柚乃に関しては分かりづらいんだけど)をしながら答えた。



「生徒会なんて、寺子屋にはなかった。
しかも、自らの手で学校を運営するなんてまさに自由の象徴そのものじゃないか」



「なるほど…」



理解した。
柚乃は極端に普通の学校生活というか学校のシステムそのものに興味があるんだった。
だから、学校らしい生徒会にワクワクして仕方がないんだろう。




「まぁ、とりあえず中入ろうか?」





俺は、ドアを二回ノックした。
静かな廊下にその音が響いて、数秒後




「どうぞ」




「失礼します」




少し緊張しながら
部屋の中に入ると俺は目を疑った。





6列に並んでいる椅子に座っている一人の人影。





「やあ、依、久しぶりだね」




「碧さん…」




そこには、長月家次男の長月碧がいた。





「碧…あぁ、長月家のやつか」




柚乃は初対面のようだ。




「なぜ、こんなとこに次期当主でもないお前がいる?」





「いや、僕だって次期当主じゃなくとも家の手伝いはしないとだからね」




「………それに依、なぜこいつを知ってる?」




「え…あぁ、寺子屋で何回か男女別で一個上の学年と魔法訓練したときに会ったんだ」




俺は、碧さんがとてつもなく苦手だ。
何事も飄々とこなし、何を考えてるのか掴ませない。
正直、この人が次期当主じゃないのが不思議なくらいだ。
頭はキレるし、魔法の技術だってピカイチだった。




「そうそう、古い仲ってこと。
それより僕は君に興味があるんだ、霜月柚乃さん?」




「呼んだ理由はそんなことか?」




「まあね、お喋りしたかっただけだよ」




「なら、帰る」




柚乃が踵を返そうとすると、碧さんが柚乃の地雷を踏んだ。




「そんな冷たくしないでよ。
涼くんもかなしむんじゃないかな?」





「なっ……………」





あいつの話は柚乃にとってタブーだ。
碧さんは何をしたいんだ。





「なぜ、お前がそんなことを知っている?それは霜月家のみしか知らないはずだ!」




態度を豹変させた柚乃を俺は止めようと口を開こうとした瞬間、耳を疑うことを碧さんが発した。





「そこにいる、依から訊いたんだよ。
君のことが大好きみたいだからね、
たくさん話してくれたよ」




「………?!」




俺は話した覚えがない。
何をいってるんだこの人は?
考えを巡らしたが、わからない。



「………依、本当か?」




「いや、ちがっ」



俺が否定しようとすると、碧さんは立ち上がって俺の方をじっとみる。




「碧さん…?」




「今日は君たちと少しだけど話せてよかったよ、またね」




そういって、俺らの横を通り過ぎようとしたとき、




「きみ………ひみ……からね」




「…………っっっっ」




俺に一言、柚乃に聞こえないように言って生徒会室から出ていった。




「おい、依、聞いてるのか?」




「えっ…うん、そうだよ、ごめんね、でもそんなに詳しいことは話してないから大丈夫。“アレ”も話してないよ」




「そうか…ならいい、帰ろう」




柚乃は不服そうな顔をしながらも、
生徒会室から出て行こうとする。






それにしても、、、





「君の秘密、僕知ってるからね」





なんで、あの人が知っているんだ。
本当に碧さんはただの長月の人間か?
四幹部でもない、次期当主でもない、
ただの十二跡に所属する人間?
考えても答えは出なさそうだ。





でも、警戒は必要だな。



俺は、柚乃を守らなくちゃいけない。





「依?置いてくぞ?」





「待って待って〜〜」






俺は、考えることをやめて柚乃の後を追いかけた。