「ヒナは?」



初めは嫌だったその呼び名も慣れたもんだ。
16年間聞いていると嫌でも慣れる。




俺 結城 陽葵は苗字も名前になるため間違えられることが多い。夏帆もその中の1人で「結城じゃない 結城 ヒナ...」「じゃあヒナね」とめんどくさがりな夏帆にそう呼ばれるようになった。




「女の子だからそりゃある」

「ふーん」



これ以上はめんどくさいのか生返事で返されアイスに集中するらしい。この暑さでアイスもすぐ溶ける。夏帆の細い指が溶けたアイスで少し濡れて流れ落ちる。




「あーあ」そう言ってスカートの裾で手を拭いた夏帆は女の子らしくない。




「ほら」



鞄から取り出したポケットティッシュを渡した。



「ヒナのが女子力あるね」

「そう思うのならもっと磨きなよ。女子力」

「ヒナの前だから女子力いらない」

「それじゃいつまで経っても彼氏できないな」

「いいよ。別にできなくて」

「女子高生らしくない」



彼氏居たことあったっけ...



好きな人も居たことないんじゃないか?



そう思ったら夏帆は少し周りの人間より、感情が少し欠落してるのかもしれないと疑った。