「美月(みつき)は俺が守る。」
そう言ってくれた君は今、どこにいるのかわからない。
元気にしてますか??
私はこの春大学生になります。君が突然いなくなってから4年が経ちました。高校ではそれなりにうまくやってた。嫌いな友達も嫌いな先生もいたけど、君もそっちで頑張っているならと耐えてこれた。それに、今年は君が約束してくれた年。ずっとずっと待ってた。なのに・・・

「one flesh この言葉は、一心同体という意味であり・・・」
一心同体かぁ。どんな時に使うんだろ。
この大学にも慣れてきた大学一年の夏。退屈な授業でノートに落書きをしていた。隣の洋子(ようこ)はまじめで熱心に聞いている。将来の夢はキャビンアテンダントで国際航空に勤めるのが夢らしい。
(いいなぁ。夢とかあって。私なんていろいろ使えるからってとりあえず英文科にしてみたけど。ここには英語が好きな人ばっかでついていけないこともある。)
「美月。あの人イケメンじゃない??」
そう言って洋子が指さしたのは授業に遅れて入ってきた背の高い男の人だった。顔は遠くて確認できないけど雰囲気はイケメン。
ツカツカツカ
その人は何を思ったか席はいくらでも空いているのに私たちのところに近づいてくる。
「あの人。こっち来てない!?」
洋子が小声だけど興奮気味に言う。
「ここ空いてます??」
そういった彼は君にすごく似ていて私は一瞬幻覚を見ているのではないかと思った。
「空いてますよ~?」
隣の洋子が色気づいて言う。
「ありがとうございます。」
ニコッと笑った顔にホッとする。
(拓海じゃない。笑った時に出るえくぼがない。)
そういえば女の子っぽくて嫌だって言ってたっけ。私は結構好きだったけど。
「ねぇ。知ってる人??」
「いや。全然知らない。洋子は見たことないの?」
洋子は男の人に対しての情報をこれでもかってくらい持ってる。
「知らないよ!だから驚いてるんだよ。イケメン情報は全部こっちにくるんだけどなぁ。」
どっから??
「前はいなかった気がする。いたら私速攻でアピールしてるもん。」
洋子は得意げに言う。そこ得意げに言うところなのかな??
授業が終わり私たちは食堂に向かう。
「なにたべよっかなぁ・・・ねぇ。あんたさ、もうちょっとカロリー気にしなよ。」
私が普通よりも大きめのハンバーグ定食を頼むと洋子がすかさず横から顔を出す。CAを目指す洋子は体重をかなり気にしている。自分だけならともかく人のまで気にするのはやめてほしいけど・・・
「あれ!さっきのイケメン君じゃない!?一人だよ!声掛けちゃおっか!!」
やめなよという私の声も聞かずに私の腕を無理やり引っ張っていく。
「あのう、おひとりですか??」
「・・・あ、はい。そうですけど。」
イケメン君は食べていた唐揚げ定食から目を離して言う。
「じゃぁ、相席させてもらいますね!!」
「ちょっと、何もここじゃなくても!!」
でも、強引に引っ張られて座るしかなかった。
「名前うかがってもいいですか??」
「辻 陽平(つじ ようへい)です。」
辻って一緒だ…で、でも、辻なんて名前珍しくないよね…?
「何年生なんですか?」
「一年です。今日からなんですけど。」
「わぁ!私たちと一緒だ!!なんで、今日から?」
「ちょっと、家庭の事情で出てこれない期間が長くて。」
洋子と辻くんの間でどんどん進んでいく会話を聞きながらハンバーグをちびちび食べる。
「へぇ。彼女とかいないの??」
!!!?
いきなり言ったー!!洋子は脈を感じるとすぐにロックオンする。
「・・・いません。」
「ほしいとかは??」
「思いますけど、俺に合う人なんかいないと思うんですよね。」
そう言いながら辻くんは定食に付け合わせのみそ汁をすする。
バチッ
お椀から顔を上げた辻くんと一瞬だけ目が合う。その目はとても悲しそうな目だった。

この時辻くんは何か特別なものを心の中で抱えている気がした・・・