「構いませんよ、おとさんですか。綺麗な名前ですね。」
「そんなことないです。ありがとうございます」
おと。
この名前は、天主さまが付けてくださった。
一族に新しい命がうまれるとき名前は天主さまが付けてくださるという。
だからいつも大切にしなさいと母さまに言われた。
母さまに言われなくても、大切だけど。
ただなんでおとなのかはわからないけど。
「しかしおとさん。あなたは帰る場所があるのですか?」
「え?あっ……」
ふいに山南さんにたずねられ私は重要なことを思い出した。
私が帰る場所はあの阿古屋の里しかない。
他に親戚がいる訳でもないし、知らない。
天主さまの元に行く訳にもいかない。
それより、新撰組って……。
そこまで考えておいおい、と土方さんが声をあげる。
「まさか山南さん、ここに住めばいいとか言うんじゃねえだろうな!?ここは女人禁制だぞ!」
「えっ、」
「お、それはいい提案だぞ歳!」
と拒否をする土方さんを他所になぜか近藤さんがうれしそうな声をあげた。
