「……それが何か」
「阿古屋一族は昨夜滅ぼされたと聞いていましたが、まさか生残りがいたとはと思ったのですよ。政に関わる我々も一応阿古屋については知ってましたから」
「……」
山南さんが私に言った。
滅ぼされた、か。
やっぱりそう考えるのが一番だよね。
長さまは天主さまを裏切ったのだから。
「なんで阿古屋が裏切ることになった。天主を裏切ることになんぞなったら滅ぼされても仕方ねえぞ」
「……それをなぜ、あなたたちに言う必要が?」
土方さんに問いかけられ私が拒否を示せば更に睨まれる。
私は彼の睨みを無視してないですよね、と近藤さんをみた。
「阿古屋がなぜ裏切った?そんなの末端の私が知るはずないでしょう。それに私たちは天主さまに音を奏でれることを誇りに思っていました。なのにそれを長さまが裏切った!話す必要あるない以前に知りませんよ。どうして?そんなの、私が聞きたいわ!」
「落ち着け」
山崎さんが興奮ぎみな私の肩に手を置くけれど私はそれを払いのけた。
私は誇りを持ってた……。
天主さまはお優しい方。
こんな末端の私に、聞いてみたいと言ってくださった。
なのに、どうして長さまは裏切ったの。
わからない。
わからないよ……。
長さまへの怒りが、ふつふつと沸いてくる。
嫌な感情が私の中に流れ込んだ。
