浅葱の音がきこえる





部屋から出た俺、藤堂平助はおとのいる部屋が見えなくなったところで天井を見上げた。

「……出てきていいよ、山崎くん」

「……」

無言で降りてきたのは忍姿の山崎くん。
山崎くんはお疲れ様ですとぺこりと頭を下げてくる。

俺は山崎くんをみながらふう、と息を吐いた。

「山崎くん、話聞いてたでしょ?」

「は……」

「これでも俺だって幹部だからね。視線くらいわかる。おとは気づいてなかったみたいだけど。なに、俺が余計なこと言わないか心配だった?決まったじゃん、会議で」

「………」

山崎くんがだいぶ前からいたのは、なんとなく知っていた。

でもあえて気付かないフリをしたのはおとを傷つかせたくなかったから。
会議で話したこと全てをおとに話すつもりはない。

あんな会議は俺はいやだ。

一くんのためだけに女人禁制にしたけれど、おとはひとりになったんだ。家族を殺された。
そんな彼女をそれも阿古屋の人間をひとりにさせる訳にはいかないし、遊郭になんてとんでもない話だ。

近藤さんは本気で彼女が新撰組に入ることを賛成したようだった。
もちろん一くんのことは考えていたと思う。

それでも女人禁制で女を入れたのはおとが、ことちゃんに似てるから。

山南さんもそう考えたって言っていた。

土方さんは怪しいのと、一くんのため。

左之さんと新八さんにいたっては、心配のぶんもあるけどそろそろいいのではないかと相変わらず。

総司はどちらでもいい、また相変わらずな答え。

俺はおとならきっと一くんを変えれる、そんな気がしたから。

当の一くんは俺たちの気持ちそっちのけで、反対ですと言ったらしい。
女を入れるなんて、と。

でも危険だからとかは言わなかったようだ。

その先は一くんはなんて言うつもりだったんだろう。

一くん以外で共通してるのは、誰も新撰組の今後の未来のためでおとを入れた訳じゃないこと。

位とか、仕事のためではないってことをおとに知ってもらいたくて話したんだ。