浅葱の音がきこえる





「悪い、だいぶ話しちまったな」

「いえ……藤堂さんは大丈夫なんですか?昨日、夜勤って聞きましたけど」

ああ、と藤堂さんは言いながらなぜかむ、とする。
私が首をかしげれば名前とひとこと。

「えっ、」

「俺のこと、平助でいいよ!敬語も必要なし!」

「でも……」

そんな、いいのかな。
私みたいなのが藤堂さんに敬語なしなんて……。

なんだか悪い気がしてならない。

藤堂さんは私の反応にいいんだってー、と笑ってくる。

「歳近そうだし!末端だからって言ったのはおとじゃんか!おとってそういえば何歳なんだ?」

「私は17ですけど……」

「あ、また敬語!って17なの!?じゃあ変わらねえじゃん!俺も17!ってことで敬語なし!わかった?」

「わ、わかった……ありがとう、平助くん」

おずおずと名前で呼んでみる。

平助くん、17なんだ。
私と変わらないなんて……ちょっとびっくり。

名前で呼んでみればへへ、と平助くんは笑う。

笑顔が似合うな、平助くん。

「なんか、うれしいな。同年代の子なんていねえからさ!」

「私も」

よし、と平助くんが気合いをいれた。

「一くんのこと、また明日話そうぜ!一くんは明日休みだけど確か刀見に行くって言ってたし。刀好きなんだ、一くん」

「そうなんだ……」

刀好きなら、わかる。
私も刀には興味はあった。だから剣術をしてたってのもあるし。
母さまに止められたけど。

斎藤さんと仲良くなれたらまたそういった話も出来るのかな。

「ああ。じゃあ、また明日なおと!ゆっくり休めよ!おやすみ」

「うん、また明日。おやすみなさい」

手を振って、平助くんを見送り部屋に入る。
押し入れにあった布団をひいて、毛布をかぶり目を閉じた。

(「また明日、なんて久しぶり」)

そう思いながら新たな決意を胸に私は眠りについた。