浅葱の音がきこえる





「おとにだけやらす訳じゃない。一くんにはもう自分を許して欲しいってみんな思ってるんだ」

「許す?」

「ことちゃんを死なせたこと、自分のせいだって何度も責めて自殺しようとしたこともあったんだ。なんとか今立ち直ってくれたけど……だからもう、自分を責めるのはやめよう、って言いたい。俺たちももちろん、協力する。やってみねえか?」

「私は……」

斎藤さんとは一方的に拒否されてから、まったくしゃべってない。
まだ1日もたってないから当たり前なんだけど。

藤堂さんたちもいるなら頑張れるかな私。
斎藤さんのために、自分を許してあげてって言うことができるかな。

(「やってみたい。斎藤さん、よく考えてみたら女嫌いなだけで嫌な人かなんて実際はわからないよね……」)

もし斎藤さんが、藤堂さんのいうように私のことを少しでも心にあるなら。

山崎さんのこともあって不安はあるけど。

「……藤堂さん」

「ん?」

優しい笑みを浮かべたまま、藤堂さんは私をみてきた。
藤堂さんはすごいな。

誰かのためにここまで考えて、行動して。

私はただやってもらってるだけ。

私はこれからひとりで生きていく日がくるまでに、自分の道を見つけなきゃならない。
いつか兄さまは言ってた。

『いつか、阿古屋から出て自分の生きていく道をみつける』

って。

兄さまは優しかったけど、阿古屋はあまり好きではなくていつも母さまと喧嘩してた。

兄さま、生きていく道をみつけるってこういうこと?

私は決意すると藤堂さんに伝えた。

「私、やります。斎藤さんの心、開かせたい。彼ともっと話してみたい。だから協力してくれますか?」

問いかければ藤堂さんは更に優しい笑みになって頷いてくれた。

「……ああ、もちろん。ありがとう、よろしくな、おと」

「はい」

ふたりで微笑みあう。
がんばろう。

いつか、斎藤さんが心開いてくれる時まで。