浅葱の音がきこえる






「女子が来るには危ないって。その子は武芸にも長けてたし最初は賛成してた俺らも、そう考えたらダメだよなってなった。でもその子は……多分ショック受けたんだろうな、自殺したんだ。『一さんと一緒じゃないといやです』って」

「そんな……」

「多分本当に一くんのこと好きだったんだよ。首をつって死んでた。一くん、あの時これでもかってくらい泣いて、叫んで謝ってた。『すまない、すまない』と。それ以来女中が入ってきても冷たくて逆に辞めていく子が多くなって、近藤さんの判断で女人禁制になったんだ」

「………」

斎藤さんに、そんな過去があったなんて知らなかった。

単に私が嫌だからと思っていたけれどなぜあんなに彼が冷たいのかが、わかった気がした。

その子もどんな気持ちだったんだろう。
死んでから斎藤さんがなぜ拒否したのかわかったんだろうか。

私もまだこの人たちについては、まだ知らないことが多い。
多いからこそ藤堂さんのいうように山崎さんとも斎藤さんともいい関係を築くべきなのかもしれない。

斎藤さんは、慎重に。
どんなにきつくあてられても、強い気持ちでいるくらいの覚悟で。

「………おとがここに来たとき一くん、震えてたんだ」

「え、」

震えてた?
斎藤さんが?

「こと、って名前呼びながら震えてた。ちょっと似てるんだよ、おととことちゃん。琴音って本名でさことって慕われてたんだ。だから余計に一くん、おとにきつくあたるかもしれない。けど俺もみんなも心の中ではおとに一くんの心を開いて欲しいって願ってる。ことちゃんと似てるおとなら、出来るんじゃないかって」

「私が……できるんでしょうか」

似てるって、それだけで?

ただでさえ、怪しまれているのに?
斎藤さんの心を開かせることなんてできるの?

私は彼女の気持ちなんてわからないのに。

私が藤堂さんをみると藤堂さんは大丈夫だよと言って笑う。