浅葱の音がきこえる





「どうして、か。そりゃ気になるよな……」

「あ、話したらいけない内容なら私、構いませんから……」

誰だって話せないことはある。

私だって今家族のことを話せと言われても無理だ。
聞かなければ良かったと後悔すれば

「ああ、それは大丈夫だよ。これ俺が話したって秘密にしてくれるか?」

と聞かれ私は強くうなずいた。

「はい」

「ありがとう、じゃあ話すな」

藤堂さんは、私の目をみながら斎藤さんの話をしてくれた。
彼の女嫌いな理由はとても、驚くべきもので。

「……突然だけど、ここがなんで女人禁制か知ってるか?」

「いいえ…」

「女人禁制、一くんのためなんだ」

「えっ……」

斎藤さんのため?

藤堂さんは苦しそうな顔をする。

「一くんだって、物心ついた頃から女嫌いな訳じゃないんだ。それなりに恋しただろうし。ただ、俺らが新撰組になる前の……試衛館っていた時の話なんだ」

「試衛館……」

「天然理心流って道場でさ。そこは近藤さんが運営してたんだけど貧しくて。全然食べ物がないとかそういうわけではないんだけどな。その時女中として働いていた子がいたんだ。すごいいい子だった。みんなその子に恋したりしてた。けど、一番一くんとその子は仲が良かったんだ。やがて、みんなふたりを応援するようになった」

「……」

仲が良かったふたり。
その先にあるのは。

「いい感じになったとこで、そろそろかって話もあった。だけど……新撰組ー、壬生浪士組っていう最初の組織結成の話が江戸中に広まって。武士になりたかった近藤さんと土方さんは参加するってすぐに決まって俺たちも自然となった」

壬生浪士組。

誰かが前に話していた気がする。
壬生浪士組という組織ができたって。

どんな組織かはわからないけれど。
今の新撰組みたいな感じかしら、

「……でもそれに、その子も着いてくるってなった。それを拒否したのは、一くんだったんだ」

「……っ!」

なんで?

いい感じだったのに。

私の反応に藤堂さんは苦笑いして、話を続けた。