浅葱の音がきこえる






「あ、食べていいからな?えっと、おとだっけ……おとって呼んでいいか?」

「あ、は、はい。いただきます」

新撰組の夕飯は一族と比べたらすごく質素なものだった。
けれど食べてみれば

「おいしい……」

と思わず顔を綻ばせた。

私たちが食べている食事はそう、冷めたものが出てくる。
美味しくないという訳ではないけれど何回も毒味された食事。

天皇のためのだからとかと言われてそんな食事しか食べたことがなかった。
けれどここは質素なのにとてもあたたかみがあって、美味しくて。

心の底から美味しいと言葉にした。

私が感想を伸べれば藤堂さんが良かった~と安堵した笑みを浮かべた。

「安心したよー、おとが寝てる間に幹部は集められて詳細聞いたんだ。山崎くんはあえて自分から言えなかったと土方さんに言ってたけど。阿古屋の人って言ったら天主さまと同じ位の人だろ?そんな人にここに住ませるのか?って俺聞いて調べてもらったけど、渡せるような人いなくて。おとのこと考えずに新撰組に住まわせたなってみんなで話したんだ。ごめんな、嫌だったか?」

「……いえ……」

同じ位の人か。
確かに新撰組からみたらそのような感じになるのかもしれない。

私は末端だから気にしなくていいのに。

たとえ新撰組のためとしても、感情がなくても助かるには違いない。

「私は末端ですから。住まわせてもらった身で、贅沢言うつもりはありませんよ。ありがとうございます」

山崎さんとか、特に斎藤さんとか。
近藤さんにさえまだこの言葉はいえない。

けど藤堂さんなら素直に言える気がした。

この人は私のために考えてくれてるって伝わる。
それが嬉しく感じた。