浅葱の音がきこえる





それからはどうやって部屋に帰ってきたのかも覚えていない。
一通り場所は教えられたけど多分次行くときはわからないな……。

部屋に帰ってくるまで山崎さんと私はもちろん無言。
山崎さんもあれからなにも言わず部屋に着いたときは『大人しくしてるんやで』。

ただ、それだけだった。

「……」

斎藤さんの言葉がぐるぐるぐるぐる回って気持ち悪い。
厄介なことくらい、知ってる。
大人しくしてろなんて知ってる。

でも私に言われたって末端なんだから知らない。

どうしろっていうの?

ひとりになれば蘇る。
あの時の、火。
火に襲われた里が焼け死ぬあの様。
そして里にいた仲間と家族の悲鳴。

誰がしたかもわからない。
なぜ長さまが裏切ったのかもわからない。

私はただ母さまに守られ、ひとりだけ逃がされて。
置いてけぼりにされて。

これから先どう生きていけばいいの?
わからない。

私は顔を膝に埋めながら考える。

追手はもう諦めたのだろうか。
追手はもうこないだろうか。

近藤さんたちは何もいわなかったけど。
私が言わなかったのもあるけど……

あの追手たち、ものすごく嫌な気がした。

あの追手たちは何者?

裏切り?
敵?

それとも、天主さま……?

「そうなら、嫌だな」

私は首を横に振った。
天主さまはきっと違う。

母さまの言うとおり、天主さまはお優しいんだから。

だから、違う、はず……。

私はいつのまにか、眠ってしまっていた。
一筋の涙を流していたことに私は気づかないまま。