『部屋は山崎くんの隣が空いていましたね。山崎くん、案内をお願いします』

新撰組の屯所で暮らすことになり山崎さんに案内をしてもらう。
本当に良かったのか。

その疑問はぐるぐるぐるぐると回っている。
山崎さんはどう思っているのだろう。

土方さんは言わずとも私が入るのは気に入らないと思う。

私はあの、と山崎さんをみた。

「ん?なんや?」

思えば、山崎さんは最初から私に優しかったりした。
厳しくも言ってきたけど。

彼の思いが聞いてみたい。

「山崎さんは、いいんですか?私が新撰組に入ること」

「ああ……しゃあないやろ。まさか阿古屋が滅ぼされることなんて、知らんし。それに阿古屋を避難して遊郭に放り込む方が後から局長が罪に囚われてしまうからな」

「……」

背中を向けたまま振り返らずに話す彼に。

ああ、だからか。

ようやくわかった。
この変な違和感、あの優しさ。

私なんかのためじゃない。

自分たちの、組織の今後のため。

私はそれもそうですね、と笑った。

(「………所詮、人間はそんなもの」)

母さまが人間は冷たいものよ、と言っていた。
天主さまがお優しいと。

その通りだと思った。

あの局長を本気で娘のようなんて思っていない。
この先どうなるんだろう。

(「天主さま」)

私は重いため息をついた。