「はあ、はあ………」


はらはらと舞う雪。
その雪はとても冷たく血を流す少女の腕に流れる度に、ジュッという染みる音がして少女はう……と顔を歪めた。

少女の腕には凄まじい火傷。

身体のあちこちにある火傷は最近のもので今日できた真新しい火傷もある。

「……はあ、はあ」

乱れた息を吐きながら少女は後ろを振り向いた。
追手は来ていない。

そのことに安堵すれば眠ってしまいそうになるのを堪えた。
本当は眠ってしまいたい。
でもそれはだめだ。
眠ってしまいたいけどとにかく今は離れなければ。

追手に捕まる訳にはいかない。
そんな気がする。

私は必死にふらつきながらも足を進めた。

「はやく、逃げなきゃ……」

本来なら自分も一族と共に死ぬはずだった。
天皇の”音”として私たちは音を奏でる存在だったのに。

どうして長さまは裏切ったの。

どうして母さまは私を逃がしたの。

疑問だらけの私は前が見えてなくて石があることに気付かずに、

「あっ……!」

ガッ、と足を躓いて転んでしまった。