「…無理だから。あと10分待って」
「はいはい」
仕方ないから10分待つことにしたあたし。
静寂に包まれた部屋の中で聞こえるのは彼がページをめくる音だけ。
あたしはなにもすることが無くてただ10分間ボーッ、としていた。
「ねえ、もう10分経ったよ」
10分後にまた声をかけると、今度はパタン、と読んでいた本を閉じてスタスタとキッチンへと向かう彼。
「てか、なんでお前に俺が指示されてんだよ…」
そんなことをぶつぶつ、と一人でため息をつきながら言ってるけどちゃんと有言実行はしてくれている。
ソファに一人になって、机に置いてあるスマホをなんとなく見つめる。
『アイツのこと、好きなの?』
脳裏に巡るのは、さっきの出来事。
ふぅちゃん、意外と力があって本当に綺麗な顔してた。
あれで、女嫌いだなんてほんとにもったいないと思う。
思い出すだけでも顔がぼっ、と赤くなり恥ずかしくなってくる。
あのあと、はぐらかされたけど…ふぅちゃんはあたしになんて言おうとしたんだろ?



