「さっきの事情はというとね……」
そういえば、話してなかったな…なんて思って話そうとしたら、ふぅちゃんがあたしの方を見た。
「知ってる。全部聞こえてたから」
「ええ!?」
ま、まさか……全部聞かれてたなんて。
リビングからふぅちゃんと部屋までの距離は目と鼻の先ほどだ。
冷静に考えれば、丸聞こえだ。
ごめん…果歩、聞かれてたわ。
心の中で果歩に謝る。
「しかも、お前声デカすぎ。鼓膜破れるかと思った」
「はあ!?それも失礼だからね!!」
「その声もうるさい。あと、すぐ泣く女も無理」
彼の視線はもうあたしには向いていなくて、本の文字へと向いている。
「それって果歩の事言ってる?」
「別に…特定してるわけじゃない」
「ふーん…」
果歩のことだったら、頭にゲンコツ食らわせてやったのに。
でも、違うのか……。
あーあ、それはそれで残念だな。
今までのイライラを全部込めて一発…と思ってたのに。
「ねえ、話し相手になってよ。つまんない」
せっかく、二人で住んでるのに
会話らしい会話が一切ないなんておかしいじゃん?
あたしもあたしだ。
なんで苦手なヤツに『話し相手になって』なんて言ってるんだろ?
あたし、そんなに友達に飢えてないのにな。



