「…そっちが勝手に来たんじゃん」
ほんとはホッとしたくせに、つい可愛くないことを口走ってしまう。
「…あっそ、それでもいいよ。お前のこと見つけれたし」
無表情なくせにどこか柔らかい声で言った彼にあたしの心臓はうるさくなっていく。
ほんとになんなの…?
いつもはそんなんじゃないくせに、調子狂うんだけど。
「っ…、それはどうもありがと。ほら、みんなのところ行こ」
胸のドキドキを隠すかのようにスタスタと歩き出そうとした瞬間、
掴まれていた腕をぐいっと引っ張られ、有村くんのところに引き戻された。
「…ちょっと、有村くん?」
ビックリして後ろを振り向くと、いつになく真剣な表情をしている有村くん。
「お前…、ムカつくんだよ」
「は?」
いきなり、眉間にシワを寄せてそんなこと言い出した彼に苛立ちを覚える。
ムカつくってこっちがムカつくんですけど。
ドキドキも一気に冷めたよ。
「何、ケンケンって、マコマコって…?バカじゃねぇの?」
「はぁ?意味がわかんないんだけど」
ますます、意味がわからなくなってきた。
人がたくさんいるのにコイツはこんなところで何を言ってるんだ。
しかも、なんでケンケンが出てくるのさ。
なんであたしたちがバカ呼ばわりされなきゃなんないのよ…!!!
ちょっとイイヤツかもなんて思ったあたしの気持ちを返して欲しい。



