でも、井原くんの座っている後ろから視線を感じてチラッ、とそちらに視線を向けるとなんとその視線の主は有村くんだった。
その隣には金田くんが座っていた。
一瞬、目が合った気がしたけど……あたしの気のせいだよね?
「ほらほら、座りな〜」
トントン、と自分の隣の空席を叩く。
あたしはお言葉に甘えて井原くんの隣に座った。
「んじゃあ、出発すんぞ。
あんま、うるさくすると先生怒っちゃうからなー」
相変わらず、面倒くさそうに話すなぁ。
すぐ側にあるオジサン先生に睨まれているのに気づいてないのかな?
「まいてぃー、睨まれてんの気づいてないのかよ」
ハハッ、と短く笑いながら言った井原くん。
「だよね。同じこと思ってたよ」
「おお!以心伝心ってやつだな!」
ニカッ、と笑い白い歯を覗かせる。
爽やかな笑顔だな、とそれが率直な感想。
「そうだね。まさか井原くんも同じこと考えてたなんてね」
「なんか慣れねぇな、苗字で呼ばれるの」
ガシガシ、と頭を掻きながら照れくさそうにしている。
そんな様子を見てあたしは一瞬ビックリしてしまった。
だって、いつもどちらかと言えばお調子者の井原くんがこんな表情してるなんて……意外だな。



