「……意外と優しいんだ」
ぼそっ、とすごく小さな声で呟いたのをあたしは聞き逃さなかった。
なによ……その不意打ち。
なんだか、胸がゾワッ、として落ち着かない。
しかも、“意外と”とか言われてるのに嬉しいなんて思っちゃうあたしが一番おかしい。
「さ、冷めないうちに食べよう!いたたきます!」
動揺しているのがバレないように彼から視線を逸らし、そそくさと手を合わせて、出来立てのカレーを頬張る。
ちょっと、辛すぎたかな?
いつもよりもピリ辛な気がする。
「辛くない?大丈夫?」
不安になって目の前で黙々とカレーを食べてる彼に尋ねる。
「別に……」
返ってきた返事はたった三文字。
無表情なその顔から感情は全くと言っていいほど読み取れない。
もうちょっと感情を出してくれたらいいのに、なんて思うのは何回目だろう。
「そ。ならよかった」
それからは二人とも何も話さずに黙々とカレーを食べる。
部屋にスプーンとお皿がぶつかるコツコツ、という音がやけに大きく聞こえる。
なんか……もっと話してくれる人だったらなー。
こんなに無言で食べることもなかったのに。
そんなことを思うけど、有村くんはあたしのカレーを美味しいと思ってくれたのか、おかわりまでしてくれて正直嬉しかった。
なのに、有村くんはあたしよりも先に食べ終わった。



