だけど、帰ってきてみると彼は悪びれる様子もなく、
むしろ、潔がいいほど堂々とソファでくつろぎながら本を読んでいた。
はぁ……ほんと、何様のつもり?
「ちょっと、用事あるなら言ってから帰ってよね」
怒りのあまり彼の座っているソファの前にある机の上にドンッ、と肩に掛けていたスクールバックを勢いよく置いた。
すると、少しだけ本から視線をあげた有村くん。
「は?なんであんたに俺の予定言わなきゃいけないの」
「今日、校外学習の会議あったんですけど」
「だから?」
「知らなかった?」
これで、知らなかったといえば、今回だけは見逃してあげる。
でも……もし、知ってたなら……
「あ、そういや将司がそんなこと言ってたな」
「思い出した……」とか言いながら謝る様子もなく本に視線を戻す彼。
「今日の夜ご飯、ミネストローネにする」
本当に意味わかんないんだけど。
忘れてたなら、謝るとかできないの?
それに忘れてたなら忘れてたなりに「次は行くから」とか気を遣って言えないわけ?
「なんで?」
「有村くんがムカつくから。懲らしめたいから」
今日の会議、色々と大変だったんだからね。
どれだけ、あたしがエネルギー消費したか。
それを有村くんにもわかってほしいよ。
本当に本当に大変だったんだから。
あたしがそんな思いをしている時に有村くんはのんびり呑気に本を読んでいたなんてムカつくに決まってるじゃん。
悪いけどあたしはそんなに器が大きくないもんでね。



