「真心、ほんとバカだね。

好きなのに手放してどうすんのよ…っ!」



怒っているように聞こえるけど、電話越しでも分かるほどその声は震えていて…


果歩の気持ちがひしひしと伝わってきた。



「でも…っ」



「でもじゃないでしょ…!

真心のそんな優しいところも大好きだけど…
そんなウジウジしてる真心は大嫌い…!!」



耳の鼓膜が破れてしまいそうなほどの大きな声で彼女は泣き叫んだ。


“大嫌い”と言われたのにも関わらず、果歩の気持ちが今は嬉しく思う。


きっと、それはあたしを勇気づけるために言葉。



「…果歩」



「あんたには有村くんしかダメなんでしょ?

だったら、余計な考えないで行け!真心!」



果歩の言葉に背中を押されるようにあたしは立ち上がり、



「果歩!ありがとう!」とだけ言って電話を切り、部屋から飛び出した。