【楓希side】




あれはまだ俺が中学二年生というまだまだガキの頃の話。



その中二の春にあの女…丸橋智織(まるはしちおり)先生がほかの中学から赴任してきた。




先生は生徒たちを魅了するような美しい顔立ちで優しく明るく性格もよく、生徒たちからも人気があった。



そのときは俺だって普通の男で女嫌いでもなかったから、ほかの男子生徒と「すっげぇ美人!」とか騒いでたのを覚えている。



智織先生は俺のクラスの担任になり、俺たちが初めて会話らしい会話をしたのは赴任してきてから一ヶ月ほどが過ぎた頃。



その日は俺が教室に忘れ物をして取りに行った時に教室に残っていた先生が涙を流していたのをたまたま見てしまった。



それが、全ての始まりだった。



このとき、無視してれば俺は傷つくこともなかったのに…と何度後悔したことだろうか。