「へえ。あなたが?」



その女の人はあたしの顔を興味深そうにマジマジと見てくる。


その目は強烈に怖くて、怯みそうになったけどこんなところで怯んでる場合じゃない。



「過去がどうとかあたしは気にしてないんで。」



ギッ、と精一杯その女の人を威嚇して睨み返す。


すると、その女の人はフッと嘲笑したと思ったら、今度は余裕の笑みを浮かべた。



「楓希、まだあの本読んでるでしょ?で、勉強も現国とか国語類しかしてないでしょ?」



え…なんで知ってるの?


図星すぎて、言葉を失う。



「その顔は図星ね。なら、まだあたしのこと忘れてないのね」



それって……どういうこと?


ふぅちゃんが毎日欠かさずに本を読むのも現国だけが得意なのもこの人が原因だったの?


それなら、彼が切なげに本を読んでいたことも全て納得がいく。


なにしろ、その本を見てこの女の人のことを思い出していたのだから。


あたしは彼女でもないのに胸が刃物で引き裂かれたかのように苦しくて痛かった。



「だ…だから何だっていうのよ!!

今はあたしの彼氏だって言ってるでしょ!?

誰があんたなんかに返すか、バーカ!!」




悔しくて……


ふぅちゃんがあたしのことを好きでいてくれても無意識に彼女のことを考えているのが嫌で。


辛くて、苦しくて…気づけばあんなことを言っていた。


まさか、あたしがこんなことを言うだなんて思っていなかった女の人は目をぱちくりさせて酷く驚いていた。



その隙にふぅちゃんの腕をグイグイと引っ張って無理やり部屋まで連れてきた。