「わ、分かってる…」
「ってあれ、前にいるの有村くんじゃない?」
あたしたちの少し先を一人でダルそうにポケットに手を突っ込んで歩いている男子高校生。
それは、前から見なくてもわかる。
確実にふぅちゃんだ。
「ほんとだ…」
こんなところで会うなんてなんか嬉しいな。
「ふふっ…真心、行ってきな!あたしのことはほっといていいから!泰人とデートでもしてくるから」
あたしの背中を軽く押して、優しく笑うと彼女はクルリと来た道の方向を向いて歩き出した。
果歩〜…ありがたいけど、そんなの緊張しちゃうよ。
でもせっかく果歩がくれたチャンスだ…生かさなきゃ!!
「ふぅちゃん!!一緒に帰ろーよ」
ふぅちゃんは突然あたしが現れたことに一瞬目を見開いて驚いていたけど、すぐに元の顔に戻った。
「…うるさくすんなよ」
そ、それはいいという事なのでしょうか?
まあ、いっか。
こうして、隣を歩いてても何も言わないって事はいいっていう証拠だよね。
自己解決していると、突然隣を歩いていたふぅちゃんが足を止めた。
不思議に思って、ふぅちゃんの視線の先を見てみるとそこには一台の赤いスポーツカーが寮の前に止まっていた。



