「あの女はもう俺が懲らしめたから」
「嘘つくな…!」
一歩一歩男に近づくふぅちゃんはプールのときなんかよりももっと怖くて、でも…頼もしかった。
「ていうか、お前さ…俺の許可なく真心に手出そうとした上にそんな刃物まで俺の真心に向けて…タダで済むと思ってんの?」
ジリジリ、と男に迫り、殴ろうと手を挙げたけど、男の顔の目の前で寸止めで手を止めた。
「二度とすんじゃねぇぞ…分かったならさっさと出てけ」
まだ風邪の名残で掠れた低めの声でそう言い放つと、男は半泣きで出ていった。
男たちが去ってすぐに
「ゴホゴホッ…!」
と、ふぅちゃんが苦しそうに咳き込むからあたしは慌てて駆け寄った。
でも、ふぅちゃんは肩に置いたあたしの手をどかして
「この礼は家に帰ってからしてもらうから」
とだけ言うと、自分も倉庫から出ていった。
そういえば、ふぅちゃん……
“俺の真心”
とか言ってたよね?
今更、思い出して体温が一気に上がった。
最近、分かってきたつもりだったけど
やっぱり、ふぅちゃんは本当に何考えてるのかわかんないよ。
その後、ふぅちゃんが呼んだであろう先生たちが駆けつけて、あたしを襲おうとした男と呼び出した女の先輩は停学という処分を下された。



