「お、俺は知らないからな!」
あたしの腕を掴んでいた男が恐怖のあまり倉庫から出ていった。
ふぅちゃんはその様子を黙って見ていた。
「おい…!ちょっと待てよ…!」
残された男が大量の冷や汗を流しながら言った。
「な、な、なんなんだよお前…!」
「お前こそ何?」
危ない状況にも関わらず、顔色一つ変えずに淡々と話すふぅちゃん。
そして、落ちていたカッターナイフをそっと拾い上げてジジジッと音を立てて刃をしまうとそれを自分のポケットの中に入れた。
「ど、どうして鍵を…!」
「職員室にスペアキーあんの知らない?」
「返せよ、真心を」
ドクンッ…
こんなときに不謹慎だけど、あたしの心臓は反応してしまった。
なんなの……ふぅちゃん。
「お、お前なんかに渡すか…!こいつは今から俺が食うんだ!」
「は?その口一生聞けねぇようにしてやろうか?」
ダルそうにポケットに手を突っ込みながら、ガンッ!と思い切り、古びた壁を蹴ったふぅちゃん。
ふぅちゃんはあたしの方に近づき、腕を掴み立ちあがさせると自分の背中の後ろに隠した。



