「あー、なんかこの部屋暑くない?」




顔を赤いのをなんとか誤魔化そうとパタパタと手で扇ぎながらそんなことを言う。


この部屋が暑いわけないのに。
だって、ちゃんとクーラーも入ってむしろ快適な部屋に近い。





「んじゃあ、俺が冷ましてやる」




そんな声が聞こえたと思ったら、ふぅちゃんの綺麗な手があたしの両頬に触れた。



ひんやりと冷たいのにふぅちゃんのせいでますます顔が熱くなっていく。




「ちょ、ふぅちゃん…!」




ほんとに今日のふぅちゃんはおかしい。




「なに?」




焦る様子もなく、平然とした顔で答える。


こんなにドキドキしてるのはあたしだけなんだ。


ふぅちゃんはあたしをからかって反応を見て楽しんでいるだけだ。




「ふうちゃんのバカ」




なんか、自分だけドキドキしてるのが悔しくてつい“バカ”だなんて言ってしまった。





「バカはお前だろ。

俺が今どんなに焦ってるか知らねぇくせに呑気にデートなんか行きやがって。ほんとバカな女」




「だから、焦ってるって何が?」




ソファの端に追い詰められたあたしの行き場はもうない。


ただ、視界に入るのはふぅちゃんの綺麗な顔のドアップ。