「えっ…」



あたしは今、彼の腕の中にいる。



これは…どういうこと?


状況が読み込めてないのに心臓だけはさっきから反応して、ドクンドクンッと大きく音を立てている。




ふぅちゃんに聞こえないかな…?




「俺のことで泣くなら別に嫌いじゃない」




あたしの耳に届いた声は柔らかく甘くて体が痺れてしまいそうだった。


さっきまでは冷たかったくせにどうして急にそんな事言うの?




「ほら、もっと俺のことを思って泣けば?」



「…っうぅ…ふぅちゃんの意地悪…ぐすっ…」




「でも、他のやつのことなんかで泣くのはダメだからな」




優しくて不思議なくらいあたしを安心させるその声に涙が止まらなかった。



「お前はしょうもない女なんかじゃねぇから」



あたしを抱きしめたまま、彼はぽつり、と言葉をこぼした。