ツンデレ王子と溺愛同居してみたら。






「ただいま〜」




部屋には誰もいないから当たり前だけど返事はない。


もし、ふぅちゃんが居ても『おかえり』なんて言ってもらえたことがない。



靴を脱いで、ソファにそっと腰を下ろす。



そして、数分後に玄関の扉がガチャと開いてふぅちゃんがリビングに入ってきた。




「おかえり」



「ん。ただいま」





なんとなく、気まずい空気が部屋に流れる。


ふぅちゃんがソファに腰を下ろすとギシッとスプリングが軋む音が静かな部屋に響いた。




チクタクチクタク…と部屋の壁掛け時計が時を刻む音だけがやけに大きく耳に届く。




「…勝手なことして悪かった。でもお前が泣くほど傷つけられたと思ったら耐えられなかった」





気まずい沈黙を破ったのはふぅちゃんの方だった。



ふぅちゃんはあたしと目が合わないように伏し目がちに自分の手をジッ、と見つめて言った。



そんなふぅちゃんの言葉にドキンッと胸が高鳴って鼓動が速くなっていく。



それと同時に胸がジーンと熱くなって心の奥から色んな思いがこみ上げてきて



それが涙に変わり、瞳に涙のフィルターがかかりふぅちゃんがぼやけて見えてくる。



ダメだって…泣いちゃダメ。




ふぅちゃんは泣く女が嫌いなんだよ?




ふぅちゃんにこれ以上迷惑かけるわけにはいかない。





「あたしの方こそ…ごめん」




今にも零れ落ちそうな涙を堪え、少しだけいつもよりも顔を上にあげた。