「でもね、彼の本性は今日みたいな感じだった。
それが分かったのは11月ぐらいだったかな。
友達と話してるの聞いちゃったの…『水沢は体と顔だけだから』って…。ハハ、ホント笑えるよね…っ」
心の中でフゥー…と深呼吸をして涙が出てこないように気持ちを落ち着かせる。
ふぅちゃんはあたしに視線を向けずにずっと本に向けたまま。
「卒業式の日に告白された。
でも、そんなこと聞いたから断った。
どうでもよかったはずなのに…大嫌いなのに…あんな事言われてなんかショックだった…」
卒業式が終わってすぐに全校生徒の前で告白されて、でも、遊びだったんだ…と思うと悔しくて苦しくて
だから『あんたみたいな遊び人とは付き合わないから』って体育館全体に響き渡るぐらい叫んだんだ。
それからすぐ彼の顔も見ずに逃げ出して、高校もわざと県外にしたから会うことなんてないと油断してたんだ。
なのに…あんな形で再会するなんて。
『こいつのことなんか最初から何とも思ってねぇから』
分かってた。
あの人があたしには興味が無いって。
だけど、好きだったんだ。
あれから、恋をするのが怖くなった。
どこかで勝手に自分の気持ちにセーブをかけてるんだ。
好きになっちゃいけない…好きになったらまた傷つく。
そう思っているうちにいつの間にか恋に臆病になっていたのかも。