ていうか…そんなに急に抱きしめるなんてズルいよ。


本当に涙が零れ落ちちゃいそうだよ。




「俺の腕の中でなら、泣いてもいいから」




ほら…またそうやって優しい言葉であたしの心の傷を癒していくんだ。



なんでこういう時にそんな優しいのかな?



そんなこと言われたら……




「ふぅちゃんの、バカ…っ」




我慢出来なくなるじゃん。


あたしはふぅちゃんの言葉で堪えていた涙の線がプツンと切られたかのように両目から大量の雫が溢れ出てきた。




「ほんとに、好きだったの…っ」




心の底から好きだったんだ。


あの頃のあたしは室井くんにありえないぐらい夢中で…今もあんな事言われてどこか傷ついてる自分がいる。



あたしがしばらく泣いてる間、ふぅちゃんは一言も言葉を発さなかった。



何も言わずにただただあたしを優しく包み込んでいてくれた。



そして、泣き止むと下ろされたままだったファスナーを元の首元まであげて


「そろそろ、戻るか」とだけ言ってあたしの話題には一切触れてこなかった。



でも、一つだけ…安堵の笑みであたしの頭に手を置いて少し濡れた髪の毛をクシャとしてから歩き出した。



その行動はあたしにとっては予想外のことで。


だけど、その行動は妙にあたしを安心させた。