あたしの姿を見た彼は一瞬顔を歪め、いっそう険しい顔つきに変わった。




「で、お前は水沢のなんなの?」



「……ただのクラスメイト」



そう言い返す彼の声はいつもよりも一段と低くて思わず背筋がゾクッしてしまうほどだった。


普段、無愛想で無表情な彼だけど、今日ほど怖いと思ったことはない。




「そのただのクラスメイトが何の用?」



「そいつに…触んな」



こんなときに絶対不謹慎だって分かってるけど、あたしの胸はドクンッと小さく高鳴った。



ねえ、どうしてキミはそこまでしてあたしを助けてくれるの?



いつもは何にも興味無いような顔してるくせに。




「は?彼氏気取り?キモイわ〜」




それに比べて、この男と来たらマジでカスみたいな男だ。


こんな奴のことが本気で好きだったなんて思うだけで恥ずかしくなるぐらいだ。




「…なんとでも言えば?

でも…、コイツだけは返してもらうから」



あたしを自分の背中で隠すように目の前に立った彼。




「ふぅ、ちゃん…っ」




あたしを助けに来てくれたのは他の誰でもないふぅちゃんだった。



前を見れば視界に入るその大きくて男らしい背中を見ると、なんだか無性に泣きたくなった。



だけど、唇をグッと噛み必死に零れ落ちそうな涙を我慢する。