桜の花びらが舞い散る頃、胸に降り積もった不安は雪と一緒に溶かしてきた筈だった。なぜだろう。この門を潜る時、またふつふつと不安が湧き上がってくる。全てを忘れて眠ってしまいたいのだけれど、わたしの願いは叶わず、春の温もりとともに目覚めようとする。





ピピピ


ピピピ


ピピピ

持続的になり続ける音の主を軽く叩いて静まるように促す。静まった所で、改めて眠気にふるふると震える瞼を無理やり起こす。ぺちっ自分に喝を入れるために頬を叩く。ひりひりと痛むそこに意識が離れて、ようやく眠気が引いてきた。春といえど、まだ4月のはじめだから布団から出ると冷たい空気の揺らぎに体を震わせる。
また、わたしの日常が繰り返される。学校指定の服に身を包み、顔を洗って歯を磨く。用意された朝食を時間をかけて食べ、慌てて家を飛び出す。なんてことない平和的な毎日だが、わたしにとっては苦痛でしかない。飽きてしまったのだ。何の刺激のない、平和な世の中に。わたしは刺激を欲してる。幼い頃感じた、大きな包み紙を中に何が入っているのか考えてワクワクしながら破くような、そんな驚きと楽しみが欲しいのだ。