「ないよ、ないない!」
燐は残念そうに唇を尖らせたけど、そのしぐさは少し子供っぽくてかわいい。
その時、燐の携帯が鳴り響いた。
スマートフォンの表示名には、非通知。
「ごめん、出るわ」
燐は絶対私の近くで話さない。
扉を1枚隔てて、玄関の前で話すんだ。
今もそうして、扉の向こうで話している。
ゆっくりと近づいて、耳を澄ませば、燐の声が漏れて聞こえる。
「ああ?壊れる前に手を引け」
壊れる?
何が壊れるんだろう。
「壊れても、金回収出来んなら問題ねえ。俺はそいつらの心配してんじゃねえんだよ。金だ、金。搾り取れるだけ、搾り取れ」
低くて冷たい声。
隣にいるときの燐とは程遠い。
「あとは切れ。金払えねえような奴はな、それか女なんか特にどうにでも払わせられるだろうよ。売った分は必ず回収しろ」
まずい!燐が戻ってくる。
急いでベッドに潜り込むと、燐が扉を開ける音が聞こえた。

