「……由紀」
さっきより少し大きい声で呼びながら、唇を頬に当てる。
それでも起きない。
由紀の唇をなぞる。
ぷっくりと柔らかい下唇に軽く吸い付いてみる。
「……んん……、」
眉間にシワを寄せて、唸りながら寝返りを打つ由紀の体を、また仰向けにする。
「由紀、……起きろよ」
徐々に声を大きくしていくと、由紀は目をゆっくりと開け、顔を俺に向けた。
「……お母さん?」
よく見えていないのかそう呟いて、目を擦ってる。
ごしごし擦ってから俺を見て、由紀は目を見開いた。
ガバッと起き上がって、掛け布団を引き寄せながら後退る。
壁に背がぶつかって、布団を抱き締めながら口を開く。


