「なんでお前が居んの?」


さっきと同じような質問を投げ掛けると、彩夏は気まずそうにしながら、俺の腕をひいて中に入るように催促する。


俺は眉を寄せながら、彩夏に引かれるまま中に入っていった。








昼間なのに薄暗い廊下を抜けて、扉を開けてリビングに入る。

キッチンまで来ると、彩夏は俺の手を離し、目でここを見ろ、と促される。


冷蔵庫の前に、人影があった。

踞って、不気味に光る包丁を見つめている。


「………母、さん?」


「………隼人……おかえり」



包丁から視線を逸らして俺を見ると、ひきつった笑顔を浮かべる母さん。

家を出てから半年しか経ってないのに、やつれて変わり果てた母さんの姿に呆然と立ち尽くす。


「……おばさん。包丁触っちゃダメだって言ったじゃん」


母さんから包丁を無理矢理奪って、もとの場所に戻すと、また俺の腕をひいて、今度は2階に上がった。