「バカ!なんでまた切ったんだ!」
手当てをしながら怒鳴ると、稲穂は目に涙をためながら謝罪を口にする。
謝ってほしい訳じゃない。
理由を知りたいんだ。
俺は一度大きくため息をついて、できるだけ優しい声で話しかけた。
「……謝るんじゃなくて、なんで切ったのか理由を言ってほしいんだ」
そう言うと、稲穂は涙を流して、小さな声で言った。
「………言ったら、嫌いになるよ」
「え?」
「私のこと、嫌いになる……」
自分で言って、余計に傷付いたのかボロボロと泣き出してしまった。
そんな稲穂を見ていたら、胸が苦しくなってきて。
俺は一旦手を止めて、小さな体を引き寄せて、抱き締めた。
「……嫌いになんてならないから、言ってみろよ。……稲穂のこと、助けたいんだ」
そう言うと、稲穂は俺の首もとに額をすり付けて、ゆっくりと話し出した。


