恋の神様におまかせ♪




「蒼太は、医大生なんだね」


本棚に並べた大量の医学の本を指差しながら、さっきと変わらないテンションで稲穂が言う。

それに頷いて、鞄を部屋の隅に置く。


鞄から水筒を取り出して、軽く洗ってから洗い物用の籠にいれて水を切る。


稲穂の手を引いてテーブルに座らせて、稲穂に向かい合って座る。


「……電気つけないとダメだろ?」


「なんで?」


「目が悪くなる」


「………その方がいい」


稲穂は長い睫毛を伏せて俯くと、膝の上で拳を握った。


……またか。


稲穂はすぐにこの世の終わりみたいな顔をする。

常に無表情でピクリとも笑わないし、声からも感情が読み取れない。


何とかしてやりたいのに、なんにも話してくれないからどうしていいか分からない。

俺の声が届いているのかすら、よく分からない。