30分たった頃、稲穂が帰ってきた。 「あれぇ!?由紀ちゃん?どうしたの?」 「……稲穂~!」 ガバッと華奢な体に抱き付く。 さっきまでは出なかった涙が、一気に溢れだした。 稲穂はなにも言わないで、私が泣き止むまで背中を撫でていてくれた。 *** 「そっかぁ……」 落ち着いてから、今日あったことを全部話した。 すると、稲穂は、うーん……と顎に手を当てて唸った。 稲穂は、ずっと私ではなく、私の後ろを見ている。 たぶん、糸を見てるんだと思う。 私と隼人を繋ぐ、糸を。