私が話し出すまで声を出さないつもりなのか、彼は一言も話さない。
街灯に淡く照らされた彼の目は、明らかに私を凝視してる。
彼が何を待ってるかなんて分かりきってる。
ここに来るまでに何回も気合いを入れ直したし、ずっと深呼吸してたし。
あとは口を開けばいいだけなのに。
接着剤でくっついちゃったのかってくらい、固く閉じて開かなくて。
現状は前進も後退もしないまま、ただひたすら時間だけが過ぎていく。
「………、油良」
「っ!?」
そんな私を見かねてか、道島くんは繋いだままの手を引いて、私を抱き寄せた。
「待ち疲れた」
「……ごめんなさい」
私の首もとに顔を埋めているから、髪がさわさわ首に触れて擽ったい。
ゆっくりと、恐る恐る、自由な方の腕を背中に回してみる。
「疲れたから……俺が言う」
……え?
彼は体を少し離して、私の目を真っ直ぐ見つめる。
「好きだ」


