家の前に、とめられたひろとの自転車に二人乗りする。

「ちな。お前に一応これ付けとけ」

差し出されたのは、ヘルメット。

「ひろとは心配性やな。こんなんいらん!暑いのに…。頭蒸れるし。」

「ダメ!しとけ!女の子怪我させたら悪いやろ?」

無理やり頭につけられる。

こういう時だけ、女の子扱いしてくるのは、ずるいと思う。いつもそう、自転車に乗せるくせに心配して無理やりヘルメットを付けさせる。だから、私は、2つに下の方で髪を結ぶ。ポニーテールとかのほうが邪魔にならないけど、ヘルメットの邪魔だし、ひろとに女の子扱いされるのはちょっと嬉しいから。


ひろとが自転車をこぎだし、風を切る。生暖かい風が髪を揺らす。
心配してる割に、ひろとは思いっきりスピードを出すから危ない。
落ちないようにギュッと、後ろからひろとを抱きしめる。

「暑苦しいなぁ」

「仕方ないやろ?ひろとがスピード出しすぎるんやもん」

「いや、お前が約束の時間に遅れるからやん。」

「約束?なんやったけ?」


はぁー。と呆れたようなため息が聞こえる。

「今日は、チビらと遊ぶって言ったやん!」

「そうやったなー」


田んぼの中の細道を越えて、少し行くと小さなコケまみれの橋があった。

そこには、もう5人の子どもたちが来ていた。

「千奈ちゃん、また寝坊したん?遅ーい」

小学一年生の女の子に怒られる。

この集落には、子どもがこれだけしかいない。4歳の子1人と、小学生4人、そして中学生が3人と高校生が1人、中学生は私とひろとと、一つ上の中3の女の子だ。高校生はひろとのお兄ちゃんで高校2年生。でも、ひろとのお兄ちゃんは、田舎から出て寮ぐらしをしているから、滅多に帰ってこない。

だから、よく休みの日は小さい子と集まって外で遊ぶ。

「今日は何をする?」

「「「「かくれんぼー!」」」

ひろとの問いかけに、皆が応える。

「鬼は、ちなね!」

ひろとが、ニヤッと笑う。

「なんで!?」

「寝坊したから!」

うぅーー!しかたない!

「範囲は?」

「北村のおばあちゃん家から上田のオジサンの畑まで!」

「わかったー!」


みんな、いっせいに駆け出して行く。


本当…。この辺の人の名前だけで範囲わかっちゃうとかすごいよな…。

なんて、考えながら数を数えた。