「え、ごめん、もう一度言って」

「聞こえなかった?」


 山田の目はまだあたしを真っ直ぐ見ていた。ばっちり目が合ってしまい、どうしていいかわからなくなる。


「吉野さんの、ことが、好きです。付き合って、ください」


 わざと文節ごとに区切って、はっきりと山田が言った。

 そりゃもう、はっきりと。

 好き、って。


 物音一つない国語準備室に、その声はずしりと重量を持って落っこちた。

「……ごめん、誰と間違えたのかな」

「間違えてないね。吉野あゆみさん。あなたに俺は告白しているんですよ」


 意味が分からない。
 人生初の告白をされて頭がパンク寸前なのもさることながら、この人が、なぜ、あたしごときを。

 選び放題のイケメンのくせして、接点もろくにないようなあたしごときを。

 自他ともに認める変人のあたしを。

 どこで間違えたら、好きになんてなれるんだろう。

 山田がこんな積極的な人間だなんて知らないし、ていうかこんなキャラだってことも知らないし、こんな真っ直ぐな目で人を見るなんて知らないし、



「あの、無理――――」



 断ろうとした、その時だった。